なぜ、あの社員は危機感がないように見えるのか?組織内のギャップを乗り越えるヒント

なぜ、あの社員は危機感がないように見えるのか?組織内のギャップを乗り越えるヒント

経営者として「このままでは危ない」と思っているのに、社員たちはどこかのんびりしているように見える。そんな場面に心当たりはありませんか?

「どうして分かってくれないんだ」と感じることもあるでしょう。

でも実は、社員に「危機感がない」のではなく、経営者と社員では見えている風景が違うだけかもしれません。

結論として、経営者と社員が同じ強さの危機感を持つことが目的ではありません。

大切なのは、会社が今どのような状態にあり、これからどこを目指し、そのために何に取り組むのかを共有することです。

なぜ経営者と社員に温度差が生まれるのか?

このズレの背景には、主に3つの違いがあります。

立場が違う

経営者は、売上、利益、資金繰り、顧客、競合、採用など、会社全体を見ながら数年先のことまで考えています。

一方、社員は自分が担当する仕事や、今日・今週の業務に集中しています。

どちらが正しいということではありません。立場が違えば、自然と見る範囲も時間軸も変わります。

持っている情報が違う

経営者には、売上や利益、受注状況、取引先の動向など、さまざまな経営情報が集まります。

社員がその情報を知らなければ、経営者と同じ状況認識を持つことは難しくなります。

「これだけ厳しいのだから分かるだろう」と思っていても、その前提となる情報が共有されていないことがあります。

責任が違う

経営者は、最終的に会社全体の経営責任を負っています。

同じ数字を見ても、経営者と社員では受け止め方が違って当然です。

まさに「ルビンの壺」のように、同じものを見ていても、立場によって“見えているもの”が違うのです。

だから、「社員には危機感がない」と決めつける前に、自分に見えているものが社員にも見えているだろうかと考えてみることが重要です。

「危機感を持て」と言うだけでは伝わらない

経営者が焦っていると、

「もっと危機感を持ってほしい」
「このままでは会社が危ない」
「もっと自分で考えて動いてほしい」

と言いたくなるかもしれません。

しかし、「危機感を持て」は感情を求める言葉です。それだけでは、社員は何をどう変えればよいのか分かりません。

中小企業では、危機感そのものを共有しようとするより、

何が起きているのか
このままだとどうなるのか
会社はどこを目指すのか
そのために何をするのか

を具体的に共有することが重要です。

そのうえで、社員自身が「自分の仕事では何ができるだろう」と考えられる状態をつくっていきます。

認識のギャップを埋める3つのアプローチ

1.現状と目指す姿を「言葉」と「図」で伝える

売上や利益などの数字だけを示して、「厳しい」と伝えるだけでは十分ではありません。

「最近、受注がどう変化しているのか」
「この状態が続くと何が問題なのか」
「会社としてこれからどこを目指すのか」

までセットで伝えます。

グラフや図を使えば、数字だけでは分かりにくい変化も共有しやすくなります。

危機だけではなく、その先にあるビジョンを一緒に示すことが大切です。

2.必要な経営情報を「見える化」する

会社のすべての数字を社員に開示する必要はありません。

重要なのは、社員が自分の仕事と会社の状況を結びつけて考えられる情報を共有することです。

たとえば、売上、受注件数、粗利、不良率、納期、顧客からの問い合わせなど、自社の課題に関係する数字を選びます。

そして、

「この数字が、皆さんの仕事とどう関係しているのか」

まで説明します。

単に数字を見せるのではなく、経営の数字と現場の仕事をつなぐことがポイントです。

3.社員から見えている現実も聴く

情報共有は、経営者から社員への一方通行ではありません。

経営者には見えていない現場の問題を、社員が知っていることもあります。

「現場ではどう見えている?」
「何が問題だと思う?」
「改善するとしたら何からできそう?」

と問いかけ、社員の意見を聴きます。

経営者の見えている世界と、社員の見えている世界を持ち寄ることで、初めて会社としての共通認識をつくることができます。

危機感ではなく「共通認識」をつくる

経営者と社員が、まったく同じ危機感を持つ必要はありません。

経営者には経営者の役割があり、社員には社員の役割があります。

必要なのは、

「会社の現在地はここだ」
「私たちはここを目指している」
「そのために今、この課題に取り組む」

という共通認識です。

その認識があれば、「では自分たちは何をするのか」という具体的な行動について話せるようになります。

社内だけで噛み合わないときは、第三者の視点も

経営者と社員の間で考え方がすれ違い、同じ話を繰り返しても噛み合わないことがあります。

そのような場合は、第三者を交えて対話する方法もあります。

第三者が答えを決めるのではなく、経営者と社員それぞれの考えを整理し、「何が違って見えているのか」を明らかにすることで、対話を進めやすくなる場合があります。

組織づくりでは、制度をつくること以上に、こうした対話を積み重ねることが重要です。

まとめ:まず「何が見えているか」を共有する

「伝わっているつもり」「分かってくれているはず」は、認識のズレを生みます。

社員に危機感がないと感じたときこそ、社員を責める前に、

「自分が見ている会社の状況を、社員にも十分に伝えているだろうか」

と考えてみてください。

そして、経営者から伝えるだけではなく、社員から見えている現実も聴いてみる。

経営者と社員が同じ風景を見ることは難しくても、互いに何が見えているのかを共有することはできます。

そこから、会社としての次の行動を一緒に考えていくことが、組織の一体感につながります。