会社を「引き継げる状態」にする3つの準備
「後継者が決まっていないから、事業承継の準備はまだできない」
そう考えていませんか?
確かに、誰が会社を継ぐのかは大切な問題です。しかし、後継者が決まるまで何もしなくてよいわけではありません。
親族が継ぐ場合も、社員に任せる場合も、外部の人や会社に引き継ぐ場合も、会社の中身がわからなければ話は進みません。
まずは、会社を「引き継げる状態」に整えることから始めてみましょう。
社長しか知らない会社になっていませんか
社員が30名以下の小さな会社では、社長が多くの仕事を担っています。
お客様との関係、見積金額の決め方、仕入先との交渉、資金繰り、社員の役割分担など、大切な情報が社長の頭の中に集まっていることも珍しくありません。
社長がすぐに判断できるため、普段の経営では大きな強みになります。
しかし、会社を引き継ぐ場面では、後継者から次のような質問が出てきます。
「毎月、どの仕事で利益が出ているのか」
「重要なお客様は誰が担当しているのか」
「この価格は、どのように決めているのか」
「社長がいなくても、仕事は回るのか」
これらに答えられる状態をつくることが、事業承継の準備になります。
仕事の流れを見えるようにする
一つ目の準備は、仕事の流れを見えるようにすることです。
たとえば、受注してから商品やサービスを提供し、請求して入金されるまでの流れを整理します。立派な業務マニュアルをつくる必要はありません。「誰が、何を、どの順番で行っているか」を、まずは紙一枚に書き出すだけでも十分です。
あわせて、社長しか担当していない仕事も確認します。
社長だけが価格を決めている。
社長しか重要なお客様に連絡できない。
社長の承認がなければ、何も進まない。
こうした仕事が見つかったら、少しずつ社員と共有していきます。仕事を見えるようにすることは、事業承継だけでなく、業務改善や人材育成にも役立ちます。
お金の状態を説明できるようにする
二つ目の準備は、会社のお金を整理することです。
後継者にとって、会社を継ぐことは責任を引き受けることでもあります。売上だけでなく、利益や借入金、今後必要となる設備投資についても知る必要があります。まずは、次のような内容を整理してみましょう。
・どの商品や取引先で利益が出ているか
・毎月どれくらいのお金が必要か
・借入金はいくら残っているか
・古くなった設備はないか
・社長個人と会社との間にお金の貸し借りがないか
細かな分析をする前に、会社の状態を自分の言葉で説明できることが大切です。
数字が整理されていれば、後継者だけでなく、金融機関や支援機関にも会社の状況を伝えやすくなります。
社員の役割と強みを整理する
三つ目の準備は、人の役割を整理することです。
小さな会社では、役職だけでは実際の役割がわからないことがあります。営業担当ではない社員がお客様から信頼されていたり、ベテラン社員だけが機械の調整方法を知っていたりすることもあります。「誰が何を担当しているか」だけでなく、次の点も整理してみましょう。
・お客様との関係を持っている人
・重要な技術やノウハウを持っている人
・周囲から相談されている人
・将来、責任ある仕事を任せたい人
社員の役割と強みを整理すると、会社を支えている人材が見えてきます。
その中から、後継者候補が見つかることもあります。また、後継者を支える幹部や現場責任者を育てるきっかけにもなります。
整理することで見えてきた会社の強み
社員10名の製造業の例です。
社長は60代で、子どもは別の会社に勤めていました。社内にも、すぐに経営を任せられる社員はいないと考えていました。
そこで、まず仕事の流れと社員の役割を整理しました。
すると、工場長がお客様からの技術相談に対応し、別の社員が納期や外注先を細かく管理していることがわかりました。
社長がすべてを動かしているように見えていましたが、実際には社員が会社を支えていたのです。
その後、工場長には原価や利益について学んでもらい、納期を管理していた社員には取引先との調整も任せるようにしました。
後継者はまだ決まっていません。それでも、社長以外の社員が判断できる範囲が広がり、会社は以前よりも引き継ぎやすい状態になりました。
後継者探しの前にできること
事業承継は、後継者を決めることだけではありません。
仕事の流れを見えるようにする。
お金の状態を説明できるようにする。
社員の役割と強みを整理する。
この3つは、後継者が決まっていなくても始められます。
会社の中身が整理されれば、親族、社員、外部の人など、誰に引き継ぐ場合でも話を進めやすくなります。まずは、社長しか知らない仕事を一つ書き出してみてください。
会社を「引き継げる状態」に整えることが、未来につなぐための次の一歩になります。

