「利益が出ているのにお金がない」──その違和感の正体
「黒字なのに、なぜか資金が足りない」「支払いが集中して、今月の資金繰りが厳しい」
そんな経験、ありませんか?
多くの中小企業経営者が直面するこの“資金ショート”の不安は、突然やってきます。けれど実は、“予兆”はあったのです。
資金繰り表なしでは経営はできない
中小企業の多くは、日々の支払いや入金を「なんとなくの勘」で管理しています。売上は順調で、帳簿上は黒字でも、実際の資金繰りは逼迫していることが珍しくありません。
特に問題になるのは以下のようなケースです:
- 入金サイトが長く、売上はすぐに現金化されない
- 季節的な支出(賞与・税金・仕入れ増)を見込んでいない
- 複数月先までの資金見通しが立っていない
このような“見えない未来”のままでは、必要な資金調達も打ち手も遅れ、突然の支払不能に陥る危険があります。
「資金の動き」を数字で見える化する
資金繰りを安定させるために、まず取り組むべきは 資金繰り表の作成 です。最低でも3か月、できれば半年先までの入出金予定を一覧で把握します。
ポイントは以下の3点です:
- 入金の見える化
- 請求済の売掛金、家賃収入、助成金や補助金の予定などを時系列で整理する
- 支払いの洗い出し
- 給与・仕入・家賃・返済・税金など、すべての支出をリストアップする
- 月別の資金残高の把握
- 「今ある現預金」+「入金」-「支出」で、各月末の残高を計算し、赤字月を早期に発見する
こうすることで、将来の「資金の谷間」が事前に分かり、金融機関への融資交渉や支払調整といった打ち手を講じやすくなります。
実際の改善事例:資金ショート目前からの回復
兵庫県内の製造業A社は、決算上は黒字にもかかわらず、資金ショート寸前に陥りました。理由は、取引先の入金サイトが長く、売上が現金化されるまでに3か月以上かかっていたことでした。
そこで、A社では:
- まず資金繰り表を導入し、支払予定と入金予定を「見える化」
- 支払サイトが早すぎる仕入先に相談し、条件を再交渉
- 融資の申し入れを前倒しで行い、運転資金の補填に成功
これにより、突発的な支払にも対応できるようになり、資金繰りの安定が得られました。
最初の一歩は「資金繰り表をつくる」こと
資金繰りの見通しが持てない経営は、まるで「地図のない航海」です。勘や経験に頼るのではなく、数字でリスクを見える化することが、健全な財務管理の第一歩です。
まずは、来月・再来月の資金の出入りを紙に書き出すだけでも構いません。
その小さな一歩が、突然の資金難から会社を守る大きな行動につながります。